Better Than I've Ever Been

日々思ったことと、その他社会について思うことを書きます。その他発達障害について自分が調べている治しかたについて書いていきます。@harada0808

進級論文 キャッシュフォーワークと三陸に仕事を!プロジェクト

 

 

 

 

 

 

キャッシュフォーワークと三陸に仕事を!プロジェクト

                          A9EB1206 原田一樹

 

 

論文構成

序章 論文概要

   1.キャッシュフォーワークとは

1-1 日本におけるキャッシュフォーワーク

1-2キャッシュフォーワークの目的

1-3 キャッシュフォーワークと従来の失業対策事業との違い

2.三陸に仕事を事業内容

2-1 三陸に仕事を!プロジェクトを取り上げた理由

2-2 発足の経緯

2-3 事業概要

2-4 プロジェクトの流れ

2-5今後の展開

   3.三陸に仕事をプロジェクト考察

3-1 プロジェクトの与えた影響

3-2 ソーシャルビジネスとしての三陸に仕事を!プロジェクト

3-3プロジェクトの成功要因

4.キャッシュフォーワークの有効性、課題

   4-1 震災後にキャッシュフォーワークを行うことの意義

   4-2キャッシュフォーワークの有効性

4-3キャッシュフォーワークの課題

5.謝辞

 

序章 論文概要

日本に大規模な被害をもたらした東日本大震災。極めて広範な地域の人々がこの震災により被害をこうむった。特に津波の影響を受けた太平洋沿岸地域の被害は甚大で町自体のシステムが崩壊してしまったところもある。

さまざまな被害をもたらした東日本大震災であるが、震災による失業の問題は深刻で14万人から20万人の程度の失業があったという推定もある。その失業者に対してキャッシュフォーワークという手法によって失業者を支援するという事例が今回の震災でいくつか起こっている。被害が大きい地域では、かつて雇用を生みだしていた場さえ被害を受け人々を雇用出来ない状況が一定期間続いてしまう。その期間に失業者にたいして職につく機会を創出するというのがキャッシュフォーワークである。日本では認知度が低くいままで実施されたことはほとんどなかった。そのためキャッシュフォーワークが震災復興に有効であるかについて具体事例を調査し検討したい。今回はその中でも認知度も高く多くの人々を巻き込み成果を出していると言われる「三陸に仕事を!プロジェクト」を具体例として調査した。三陸に仕事を!プロジェクトは今回論文を書くにあたって参考にしたCASH FOR WORK –Japan(http://www.cfwjapan.com/)の事例調査においては完成度として最高と言われている。そこでこのプロジェクトの成果について考察し、キャッシュフォーワーク自体の有効性や今後の課題について考察していきたい。

 

 

 

 

  • キャッシュフォーワークとは

 

1-1 日本におけるキャッシュフォーワーク

キャッシュフォーワークは2004年のインド津波災害や2008年のミャンマーをおそったナルギス台風の時など途上国の災害復興の場面で採用されてきた実績のある手法であるが、日本では知名度が低くキャッシュフォーワークについて書かれた本もほとんど出版されていなかった。しかし今回の東日本大震災の直後に関西大学社会安全学部准教授で公共政策(防災・減災・危機管理)・地域経済復興が専門の永松伸吾氏が震災復興の事業としてキャッシュフォーワークをネット上で提案したことがきっかけとなり幅広い人々からの賛同を得ることになり、実際にキャッシュフォーワークの概念が日本にも広まっていった。

 

 

1-2キャッシュフォーワークの目的

それにはまずキャッシュフォーワークの目的について説明したい。キャッシュフォーワークは序章でも少し述べたが基本的には震災によって職を失った被災者が次の職につくまで働く機会を創出し短期間の支援を行うソーシャルビジネスのことである。災害において機能しなくなった労働市場を一時的に代替し、被災者を復興事業に雇用して賃金を支払うことで被災地の円滑な経済復興と被災者の自立支援をするというのがキャッシュフォーワークの基本的な目的である。

 

 

1-3 キャッシュフォーワークと従来の失業対策事業との違い

また、失業対策事業とキャッシュフォーワークの違いについても述べたい。キャッシュフォーワークは従来の失業対策事業と通じるところを持ちながらその理念が異なっている。失業対策事業の目的は雇用の維持である。つまり失業者が何らかの職に就き安定した収入を得られれば目的は達成したことになる。これに対してキャッシュフォーワークは被災によって失業した人々自らが復興に貢献することで得られる誇りや尊厳という賃金以外のものも被災者が得るということを目的にしている。

 被災者が自ら働くことで、働くことから得られる生きがいや尊厳、または自らで自らの街を立て直しているという自覚から尊厳を得るということがキャッシュフォーワークでは重要になっている。被災者がただ収入を得られるということだけが目的なのではなくやりがいのある仕事をしているという自覚を得るということまでが目的なのである。

なので、キャッシュフォーワークの中には通常時では事業として成り立たない業務に対しても賃金を与え被災者を雇用するというものもある。具体例としては、気仙沼市で行われている「思い出は流れない写真救済プロジェクト」である。この事業は津波で流された思い出の品を洗浄し、持ち主のもとへ返すということを行っている。これは事業として利益を生む構造にはなっていないが、気仙沼市復興協会によって10人以上の被災者が雇用され賃金を得ている。このように単純に失業者を職に就かせることが目的の失業対策とキャッシュフォーワークは目的が微妙に異なっている。

 

 

 

 

  • 三陸に仕事を!プロジェクト」について

 

三陸に仕事を!プロジェクトは、三陸の海岸で仕事をなくした女性の仕事の創出のために作られたプロジェクトである。浜のミサンガ「環」というアクセサリーを製造、販売し三陸に仕事を!プロジェクトは三つの目標によって事業運営している

 避難所で可能な手仕事を創出し、「自立」の基盤を作る、年寄りの「生きがい・やりがい」をつくり、未来の希望をともす支える側も実感できる「目に見える支援の証」を還流させる。という三つの目標の元に女性たちのための仕事を創出している。プロジェクト開始当初は岩手県大船渡市の5名程度の避難所チームから始まったが[i]岩手めんこいテレビ博報堂仙台放送など大手企業の全面協力によって話題をよび生産を拡大し現在では岩手、宮城の11の生産チームがミサンガ作りを行っている。

 

 

2-1 三陸に仕事を!プロジェクトを取り上げた理由

 三陸に仕事を!プロジェクトは一般社団法人CASH FOR WORK JAPANのホームページでは日本でのキャッシュフォーワークのモデルケースになるとかかれていた。またテレビや有名人のブログなどでも取り上げられ話題を生んでいた。この事例がキャッシュフォーワークのモデルケースといわれるような成功事例となったのか、話題をうむまで人々に広がった経緯について疑問に思い、この事例を調査した。

 

 

2-2 発足の経緯

 設立のきっかけは、博報堂の社員である鷹嘴氏が永松氏のネット上でのキャッシュフォーワークの提案を見たことから始まる。これによってキャッシュフォーワークの概要を知った鷹嘴氏は震災によって仕事を失った漁港の女性たちに仕事を作ることはできないかと考えたことがこの事業の設立のきっかけである。

震災以前は港では女性たちが氷屋、魚市場、加工所などで働き収入を得ていた。しかし、震災以降、津波によってそういった街のシステム自体が壊れてしまい復旧には時間がかかってしまう。浜の女性たちは働く場が長期間なくなってしまうのだ。昔から浜の女性は働き者で男性と同じように働いてきた。そうした女性たちが仕事を失ってしまえば「私は何も役に立ってないのではないか」とふさぎがちになってしまうこともある。実際、阪神淡路大震災においては震災後、高齢者の自殺率が上がってしまうと言ったようなことが起こっていた。港で働いていた女性たちにもそういったことが起こる可能性があった。

そうした女性たちに仕事を提供することで、女性たちに収入を与えることや不安を取り除きたいという思いからこの事業の企画案が震災後、博報堂によって企画されることになった。そして、岩手めんこいテレビ仙台放送に資金などの援助を受け事業を開始するにいたった。

 

 

2-3 事業概要

 浜の女性ができる手仕事として魚網を使ったミサンガを商品化、販売している。

 

・商品名は浜のミサンガ「環」 

・浜の女性が愛着のある魚網を使ったミサンガ

・ミサンガは太・細2本セットで販売価格は税込み1100円

・製作者は一つ製作するごとに約570円の収入を得る

・ネット上で生産数、販売数、作り手と生産管理者の得た利益を公開している

・CMやPR効果で雇用拡大をはかる

・販売は基本ネット販売、また東北を中心に店舗に商品をおく店もある

 

・デザイン

浜の女性らしいもので、身につけることができ見るたびに震災や津波のことを思い出してもらえるものということで、浜の女性に愛着のある魚網を使ったミサンガを作ることになった。デザインは秋田のアーティストによって考案されたものである。ホワイトバージョンの他に、ブルーバージョン、ウィンターバージョンがある。

 

・収益について

三陸に仕事を!プロジェクトはミサンガの販売によってでた利益の分配の内訳や期間ごとの販売数、生産数をネット上に公開している、それは以下の通りである。

 

販売価格1100円/1セット当たりの内訳

作り手さんへの賃金                         52.4%

生産管理者さんへの賃金                       8.0%

原材料費(魚網・麻紐・ビーズ玉など)                12.0%

ネット決済手数料・販売店への販売手数料               10.0%

諸経費(販売促進費経理事務費・販売管理費・生産者研修費・交通費他)17.6%

 

生産・販売数 集計期間:11月1日~12月31日

生産数                               38,458セット

販売数                                                            33,729セット

作り手さんの人数(岩手県宮城県)                    298人

作り手さんたちの収入                        22,151,808円

生産管理者さんたちの収入                      3,384,304円

 

販売総数は2012年1月で10万セットを超えている。

 

・広告、宣伝活動

テレビCM、TwitterFaceBookYOUTUBE、WEBサイト、生産者ポスター、商品ポスター、イベント、実演販売など幅広く広告宣伝活動をおこない影響を広め雇用拡大を行っている。

商品、生産者ポスターは全国の支援者が活用できるようWEB上でダウンロードできるようになっている。

企画もとの博報堂が広告代理店であることを活かしプロの手による広告、宣伝活動が行われている。

 

・販売方法

販売方法は基本的にネット販売になっている。そのほかにもいくつかの店舗においてミサンガが直接販売されている。また震災復興フェアなどでも販売が行われている。

ネット販売は大変好評で予約販売開始で即完売状態になるほど。

店舗販売は2011年11月において東北地方において9つ、関東地方で2つ、関西で1つ、九州で1つの店舗において行われている、また衣類や小物販売をおこなうSHIPSの店舗においても販売が行われている。

・仙台でミサンガ販売を行う菅原酒店について

仙台で浜のミサンガ販売を行う菅原酒店は一店舗で千個以上のミサンガを販売したという。またミサンガを置くことになった経緯については、偶然仙台放送の方が店にくるお客であり、場所が目立つからおいてくれと言われたことからそうである。

 

ステークホルダー

三陸に仕事を!プロジェクトは

運営支援を仙台博報堂、盛岡博報堂が行い岩手めんこいテレビ仙台放送が広報、出資を行っている。監査を岩手銀行が行っている。また生産管理を宮城と岩手の被災した現地企業が行っている。図にすると以下のようになっている。         

 

 

 

売店

各地域

 

顧客

 

                販売

                 収益

           
     
       
   
 
 

 

 

  ネット販売       収益     販売支援    代金回収 

       
 

運営事務局

   運営支援        販売支援

仙台博報堂        仙台放送

盛岡博報堂    出資  岩手めんこいテレビ

 
   

 

岩手銀行

 
 

 

 

                               監査

                                        

   

                                                                                      

                      

  

                               

 
   

 

 

 

 

 

 

     ミサンガ商品集荷             ミサンガ製造支援

 
 

生産者

     被災者

    (お年寄り)

  (職を失った社会人)

 

 

 

                                                  

 

 

 

 

 

 

 

2-4 プロジェクトの流れ

 

 

 

プロジェクトの企画案は震災後10日後には仙台博報堂で最初の企画案が出されていた。三月の下旬には二回目の企画案がだされ、4月の中旬には岩手めんこいテレビにプレゼンが行われていた。五月初旬から岩手県大船渡市三陸町越喜来においてミサンガ作りの講習会が開かれ製作が始まった。その後7月にネット販売開始後順調に販売数を伸ばしていった。そのころには岩手県に2つ、宮城県に3つに生産グループが増え作り手は200人を超えた。

広告宣伝活動などによって順調に販売者数、生産者数がのび事業拡大し現在に至る。

 

2-5今後の展開

 今後の展開としては三陸に仕事を!プロジェクトは当面、新しいデザインのミサンガなどを生産し販売していくが5社での事業展開は震災から一年をめどに一旦打ち切るとのことである。

キャッシュフォーワークにおいてはその事業を終える時期を決めるのが困難であると言われている。ある程度の収入をえるこの事業が長い間継続すると、ミサンガを生産している被災者が元の職に就く意欲が減ってしまうからだ。あくまでキャッシュフォーワークは震災後の一時的な支援であって元あった市場を長く代替するものではない。そこで震災後一年という目標の元にこの5社での事業展開は打ち切るとのことだ。11のエリアごとに独立して事業を進めようとするのであれば若干の事業のサポートを今後していく。

 

 

 

 

  • 三陸に仕事を!プロジェクト考察

 

3-1 プロジェクトの与えた影響

 2章での三陸に仕事を!プロジェクトの影響について考えてみるとプロジェクトは被災者に対し金銭的にも心理的にも好ましい影響を多く与えたと言える。まず金銭的には11月からの二カ月間の集計をみると約300人の作り手に2200万以上の収入を確保している。1カ月間に平均で一人当たり約37000円の収入があることになる。これは浜の女性にとって良い収入源になっていると言えるだろう。

また、心理的には生産者はミサンガを無心で作ることによって、被災でのつらい経験を忘れることができるということや、抽選で仮設住宅に入居した人ばかりのところで交流があまりなかったところでミサンガの講習会が行われることでミサンガという共通の話題の元の交流が生まれたということが、ハート再生ワーカーズ(著者井上きみどり)にも描かれていた。

三陸に仕事を!プロジェクトがなければ、浜の女性たちは街が復旧するまでに働く場所がなく職を求め街から多くの人が出ることになってしまったかもしれない。このプロジェクトは事業開始後から、生産者を多く増やしていき、街から出る人々減らすのにも役立ったと言える。

このようにミサンガの製作に携わった人々は金銭的にも心理的にも三陸に仕事を!プロジェクトに参加する事で良い影響があったと言えるのではないだろうか。

 また浜のミサンガはネット販売での予約が開始すると即日完売してしまい、また、店舗販売においても一つの店舗において1000セット以上を販売するというような人気を生み話題をうんだ。社会的にも影響を与えたといえる。

 

 

3-2 ソーシャルビジネスとしての三陸に仕事を!プロジェクト

キャッシュフォーワークは社会問題の解決を目的として収益事業に取り組むソーシャルビジネスの一つの形であるといえる。ソーシャルビジネスの観点から見て三陸に仕事を!プロジェクトの事業を評価したい。

ここではソーシャルビジネス研究会報告書における①一般のものあるいはソーシャルビジネスの商品、サービスの利用者を対象としたアンケートと②ソーシャルビジネス事業主に対するアンケートを参考にしたい

①においてソーシャルビジネスにおける期待することというアンケートでは

・地域や社会に貢献する(48.1%)

・行政や一般企業では提供できないきめ細かなサービスを提供する(23.4%)

という二つが多くの割合を占めている。

三陸に仕事を!プロジェクトでは被災地の人々を雇用する事で地域に貢献し、またミサンガを被災者が販売し利益を得るということは行政には出来ない事業を行っている。

このように三陸に仕事を!プロジェクトは人々が持つソーシャルビジネスに対する期待にこたえていると言えるだろう。

また、②において事業主が事業展開上の主要課題というアンケートにおいては事業者は課題としては

・消費者・利用者へのPR不足 (45.7%)

 ・運転資金が十分に確保できない (41.0%)

 ・人材不足のため体制が確立できない (36.2%)

 ・経営ノウハウに乏しい (19.7%)

などが上位にあげられている。

これらの課題に対しても三陸に仕事を!プロジェクトは大手企業が協力した結果このような課題に直面しなかったといえる。

ソーシャルビジネスとしても三陸に仕事を!プロジェクトは大手企業の資金力とプロによるPR活動によってソーシャルビジネスの事業主が一般的に直面する課題を解決する事が出来た。

 

 

3-3プロジェクトの成功要因

 上記のようにプロジェクトがソーシャルビジネスの事業主が一般的に抱える課題にほとんど直面しなかったのは大手企業によって事業が企画運営されことにあると言える。キャッシュフォーワークの事例として装飾品のようなものを製作、販売するという事例は他にもあるが、この事例ほどに話題生んではいない。その差異は大手企業のプロによる企画や広告、宣伝の結果によって生まれたものである。今回この事例を調査するにあたって取材させていただいた鷹嘴氏プロジェクトが此処まで話題を呼ぶにいたった要因として、メディアとの連携ができたこと、テレビ局が協力しているのでCM料金がかからなかったこと、CMの反響が大きかったことSNSの影響があったことを挙げている。

資金繰りに関しても、初め急激に注文量が増えたため黒字倒産の危機にあったが、大手企業が各自資金を出し合うことで困難を逃れることができた。これもやはり大手企業の協力の元に事業展開がなされたからであるといえる。

 

 

4章 キャッシュフォーワークの有効性、課題 

 

4-1 震災後にキャッシュフォーワークを行うことの意義

キャッシュフォーワークを震災後に行うことの意義は被災者に収入を得られるようにすることや震災後、被災地に職を創出することで、被災者の心理面の不安を取り除き、街から人々が出て行ってしまうのを防ぐことにある。

キャッシュフォーワークの目的は失業対策事業のように安定した収入を得られる職に失業者をつかせるということが目的ではない。震災後の市場が機能していない間の場つなぎとしての収入や働くということ自体から得られる生きがいや誇りというものを得る機会を創出することが重要な目的なになっている。この点が従来の失業対策と大きく違っていることであり、その違いこそがキャッシュフォーワークを震災後に行う意義である。

 

 

4-2キャッシュフォーワークの有効性

 キャッシュフォーワークの有効性としては三陸に仕事を!プロジェクトを例にしてみればあったと言える。被災者である事業の参加者にたいしてある程度の収入を得させることができ、ミサンガ生産者同士の交流をうみ、震災後の被災者の心理的な不安を取り除くことになった。これだけをみればプロジェクトの効果は大きいものだったと言えるだろう。

特にキャッシュフォーワークは被災者の心理的面に良い影響与えていると言えるだろ。それは仕事に夢中になることで震災のつらい経験を忘れることができるということや、またがれき撤去をするというキャッシュフォーワークにおいては自分たちの手によって復興しているんだという誇りを得られる。また、震災後、労働市場が混乱し被災地に職がない中で職を創出する事で街から離れてしまう人々を減らすという効果もある。とくに今回の地震では小さな漁港の街も多く被災したので街から出ざるを得ない人々が多々いることが予想される。

そういった点で今回の震災におけるキャッシュフォーワークは有効であったと言える。

 

 

4-3キャッシュフォーワークの課題

 キャッシュフォーワークの課題としては資金、被災者への賃金の設定、事業の終了時期の問題があげられる。まず資金については三陸に仕事を!プロジェクトでは大手企業の出資によってプロジェクトが始動したが、他の事例でそういったことは起こりにくい。なぜなら、キャッシュフォーワークはしっかりとした収益をあげられるようなものばかりではないからだ。例えばがれき撤去をする場合においてもがれき撤去という労働に対価を支払うものがいない。これには行政の資金援助が必要だろう。キャッシュフォーワークでの雇用者への賃金を寄付金などの資金で賄っている場所もある。キャッシュフォーワークを行う際にはどこから資金をえて被災者を雇用するのかが問題である。これには行政、またはNPOなどとの連携が必要になるだろう。

 また賃金の問題にかんしては賃金を高すぎても低すぎても問題が起こってしまう。賃金が高すぎれば、キャッシュフォーワークは労働市場の混乱期の一時的なものであるのに被災者が他の職に就こうとする意志を阻害してしまう。また低ければそもそも、その仕事を魅力に感じず雇用数を増やすことはできないだろう。キャッシュフォーワークの効果を強めるために雇用者の拡大は必要であるが、他の職に就くことを阻害するのは問題であるので賃金を設定する際には慎重にならなくてはならない。

 事業終了の時期については賃金の問題に通じることであるが、ある程度の収入をキャッシュフォーワークで得られていれば他の職に就くことを阻害してしまう。また、キャッシュフォーワークから抜け出すことのできない人々はある程度存在してしまい、事業を辞めるに辞められないことになってしまう。そのために事業の終了時期に関しても慎重に決めなければいけない。

 東海地震など今後起こる可能性の高い大規模な地震もある。この課題について慎重に検討し震災後に速やかに行政などが一体となりキャッシュフォーワークが進められる環境が整っていれば震災後の被災者のストレスを和らげることになるのではないだろうか。

 

 

 

 

5章 謝辞

今回の論文を書くにあたって仙台博報堂の鷹嘴愛郎様、三陸に仕事を!プロジェクトにかかわっていた佐藤大樹様にインタビューに協力いただき、大変貴重な話を伺うことができた。この場をかりてお礼を申し上げたい。

 

参考文献URL

 キャッシュ・フォー・ワーク (岩波ブックレット)永松伸吾

ハート再生ワーカーズ 井上きみどり

ソーシャルビジネス研究会報告

CASH-FOR-WORK JAPAN http://www.cfwjapan.com

三陸に仕事を!プロジェクト http://www.sanriku-shigoto.com