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卒論 創造都市の概念の考察と日本の都市での取り組みについて 

 

                                                                                             A9EB1206 原田一樹

 

 

 

 

 

構成

はじめに

第1章 創造都市論

 第1節 世界都市と創造都市

 第2節 創造都市の系譜

第2章 日本の代表的創造都市

 第1節 横浜市

 第2節 金沢市

第3章 仙台市に創造都市戦略を生かす

 第1節 仙台市の現状

 第2節 仙台市の創造都市論に関わる内容

 第3節 今後の仙台市の持続的発展をめざして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はじめに

 

 創造都市という概念が今、多くの都市で注目されその概念が取り入れられている。仙台市でも、その影響をうけ取り組みを行っている。今、創造都市というものがなぜ注目され多くの都市にとりいれられているのか、また海外で発展したこの概念が日本ではどのように受け止められ、生かされているのかについて興味をもった。

 そこでこの論文では概念の内容と注目された背景について考察し、またそれが日本の都市でどのようにいかされているのかについて分析する。また、それらの内容を踏まえ仙台市の発展のためにどのように生かされるかについて考察を行いたい。

 

 

 

第1章 創造都市論

 

第1節

世界都市と創造都市

 

 創造都市という概念は世界都市という概念にたいするオルタナティブなアイディアとしてだされ注目されたという背景がある。そこで世界都市という概念について説明し、その後、創造都市という概念が注目されだした背景を説明する。

 ・世界都市

 1980年代、国際的金融ブームなどを背景にニューヨーク、ロンドンを初めとする国際金融センター都市の繫栄を説明する概念として世界都市というコンセプトは登場した。グローバリゼーションの進展を背景としてグローバルな金融、保険、法人サービスの集積が都市で起こり、 一つの都市がその国の経済的な中心としてだけでなく世界的な経済活動の中心となっていった。そうした都市の説明として世界都市という名前が使われたのである。ニューヨークは70年代に一度衰退したが、こうした、金融、保険、法人サービスの中枢機能の集積が強まったということから回復し、この世界都市というコンセプトはニューヨークの衰退からの回復という現象によって多くの都市から好意的に受け取られ80年代、90年代において世界都市を政策目標として掲げる都市を世界中に輩出した。

 しかし、世界都市は初めは良い印象の面ばかり注目されていたが、次第にその負の側面に注目されるようになった。地価や家賃、オフィス賃料の上昇によって、普通の市民や商店・工場などが居住、立地できなくなったということや、失業者の増大、賃金格差などの上昇が世界都市化によって引き起こされてしまったのである。そうした負の面に注目がいくにつれて世界都市というコンセプトはいくつかの都市を除き政策目標とはならなくなり、インパクトを除々に失っていった。

・創造都市

 世界都市が都市にとって良い影響があるというだけでなく負の影響もあるということが注目されるにつれて世界都市に対して代替的な概念がいくつか登場し、その中でも創造都市というコンセプトが注目された。

 世界都市では金融、保険、法人サービスの中枢機能の集積によってその都市の経済を発展させたが、発展を享受した人間は一部であり悪影響を受けた人々もいた、また一つの都市に企業の中枢機能を集積させるということは、他の都市との階層をつくることにもつながり少数の都市だけが発展し、他の都市の発展を阻害するということにつながってしまう。そういった世界都市の負の側面への注目や、中小規模の都市では世界都市を目指すことは難しく具体的な政策目標を掲げることができないということから、世界都市に変わる代替的なアイディアが中小規模の都市を中心に出現し、その中の一つが創造都市という概念であった。この概念の重要なの部分は都市の創造性に注目するということである。現在、多くの創造都市都市を政策目標として掲げている都市は、その地域に創造性豊かな人間の集積を目指すということや、都市の人間が有機的に交わり創造的に課題解決、発展をなしていくということをイメージしている。地域や都市が人や産業の単なる受け皿として考えるのではなく、その地域の構造や特色を生かし、人々の創造的活動を引きおこしていくことを目指すというのが、大きなポイントといえるだろう。

 

 このように創造都市という概念は世界都市という概念への注目の後、その負の側面への注目や、中小規模都市が政策目標としてとることができないということなどの要因から、世界都市とは違う都市の政策目標として注目されるようになった。しかし、創造都市という概念には主に二つの系譜があり、同じ創造都市を政策目標としている都市であっても中身が微妙に異なっていることがある。そこで次に創造都市の系譜について説明する。

 

 

第2節

創造都市の系譜

 

ジェイン・ジェイコブズ

 創造都市という言葉を最初に使ったのはジェイン・ジェイコブズであった。彼女はアメリカの都市研究者で1970年代のアメリカのスタグフレーションを伴った経済危機に対して、一つの国全体の経済を把握することではなく、都市や地域といったより小さな経済の動きに着目し、その視点から経済を把握するということが重要であるとし、発展、または衰退する地域の構造を分析した。彼女は、都市や地域が今まで輸入していた商品を自前でその都市が作るという輸入代替が、都市発展において重要であると主張し、その過程はイノーベーションとインプロビゼーション(ジャズの即興演奏のような反応)の連鎖反応によって都市の輸出品の多様化が起こり、都市や地域が発展していくと考えた。このように、彼女は都市を単なる産業の受け皿としてではなく、都市や地域の持つ構造に着目して、その構造が産業発展につながり、国全体の経済が発展していくと考えたのである。この考え方が後の創造都市概念の発展に大きな影響を与えたといえる。現在の創造都市論の思想元となった経済学者が影響を受けたということも述べており、創造都市という概念は彼女の思想を元として発展していったといえるだろう。先ほど創造都市の項目で述べた様な、都市の構造や特色を生かし、人々の創造的活動を引き起こしていくことを目指すという創造都市の大きなポイントは彼女の理論をもとにして生まれたともいえる。彼女の経済発展において国全体だけでなく、都市や地域といったものの構造から経済発展について考えるという視点が現在の創造的都市論において重要なポイントになっており、彼女が与えた影響は大きい。

 

チャールズ・ランドリーとリチャードフロリダ

 最近の都市論において、その大きな思想元となっているのはチャールズ・ランドリーとリチャード・フロリダである。彼ら二人はともにジェイン・ジェイコブズの理論の影響を受け、それらを発展させていった。日本で創造都市を政策目標として掲る都市ではこの二人の理論の影響を受け創造都市という政策目標を掲げているといえる。しかし、二人はどちらも、人や地域の創造性に着目し都市に関する分析を行っているが、その切り口は異なっているため、創造都市という概念には大きくわけて二つの系統があると言ってよい。

 

チャールズ・ランドリー

ランドリーの理論は日本では佐々木雅幸がその影響を受けており、彼がランドリーの理論についてまとめている。彼によれば、ランドリーは都市問題を創造的に解決するための、創造的環境=創造の場をいかにして作り上げ、その都市がその環境を持続させ、運営していくのかについて自ら実践を踏まえ提案した。彼の理論ができた背景には、ヨーロッパにおいて製造業の衰退が起こり、青年層の失業者が増え国の財政危機が起こってしまったということがあり、また、彼の問題意識は産業空洞化と財政危機がおこっている中でどのように都市の発展を目指すかということであるとしている。彼は、欧州文化都市の成功事例を分析する中で、芸術文化の持つ創造的なパワーを生かして社会の潜在力を引き出そうとする都市の試みに注目しており、創造性を空想や想像よりも実践的で知識(インテリジェンス)と革新(イノベーション)の中間にあるものとして「芸術文化と産業構造をつなぐ媒介項」として最重要に位置づけているということが彼の理論の特徴だとしている。また、佐々木雅幸はランドリーが芸術文化の創造性に着目した理由を説明している。

 それは、まず第1に、脱工業化都市においてマルチメディアや映像、映画や音楽、劇場などの想像産業が製造業に代わってダイナミックな成長性や雇用面での効果を示すという点。

 第2に芸術文化が都市住民にたいして問題解決に向けた創造的アイディアを刺激するという点

 第3に文化遺産と文化的伝統が人々に都市の歴史や記憶を呼び覚まし、グローバリゼーションの中にあっても都市のアイデンティティを確固たるものとし、未来への洞察力を高める素地を耕すという点。

 第4に地球環境との調和を図る「持続可能な都市」を創造するために文化が果たす役割に期待しているという点

 という4点である。これは製造業の衰退よって単なる工場誘致では地域の経済発展が見込めないということを背景としメディア、映像、音楽の産業や知識集約的な産業の発展が進んでいる中でそうした産業が今後の経済発展の動力になると考え、そうした産業につく人々や他の多くの市民の創造性を刺激することが都市問題解決の重要な要因とし、芸術や文化に着目し、それらが人々の創造性を刺激すると考えているといえる。

 

・リチャード・フロリダ

 彼は都市の経済発展においてクリエイティブクラスというものに注目し、クリエイティブクラスの集積こそが都市や地域の経済発展に重要であるということを述べた。彼はアメリカの4000万にあたる労働者がクリエイティブクラスにあたるとし、クリエイティブクラスをSUPER-CREATIVE CORE(超創造的中核)とCREATIVE PROFESSIONALS(創造的専門職)の二つに分けて考えた。この二つの分類の具体的な内容は以下の通りである。

 超創造的中核:①コンピュータ、数学②建築・エンジニア③生命・自然科学および社会科学④教育、訓練、      

           図書館⑤芸術・デザイン・エンターテイメント・スポーツ・メディアの各専門職種

 創造的専門職:①マネジメント②ビジネス・財務③法律④保険医・技師⑤セールス・マネジメントの各専門職種

 

また、彼はポーターの「グローバリゼーションが加速する現代、産業集積は地域ごとにますます専門化の様相を見せている」という言葉を引用し、ソフトウェアやバイオテクノロジーのようなハイテク産業ではさらに高密度の集積があるとも述べている。そこからクリエイティブクラスの集積こそが都市発展において重要であると述べ、そうした人々が集積する地域にはゲイやボヘミアン(芸術化や作家など)の割合が高いということを指摘し、各都市のゲイ指数、ボヘミアン指数などについて分析した。

 ゲイ指数とクリエイティブクラスの集積にかんしては、アメリカの文化的特徴によっておきた要因といえるものであるが、ゲイやボヘミアンがクリエイティブクラスの集積に貢献している要因として彼は、1、環境への美的感覚と2、寛容性、文化的開放性という2つをあげており、日本などの都市ではゲイやボヘミアンの割合について考えるというよりはこの2つの貢献要因について考えたほうが良いといえる。しかし、これらの二つの都市に良い影響を与える要因は抽象的で数値化するのは困難なようにも思われる。

 

二人の理論の共通点と相違点

 このように、彼ら二人の理論は若干の異なりをみせているが二人の共通する部分は、グローバリゼーションの影響による産業構造の変化から都市に住む人々が創造性を発揮することの重要性に着目し、重要になってきていると考えている点と、都市の文化的環境を重視し、都市の良い文化的環境がその都市の経済発展に正の外部性を与えると考えている点にあるといえるだろう。日本の創造都市を目指したまちづくりにおいても都市の文化的環境に特に着目し、文化行政に力を入れているという点からも彼らの二つの理論はどちらも都市の文化的環境づくりを重要視するという風に日本では受け止められ生かされているといえる。 

 しかし、フロリダのクリエイティブクラスの考え方は先述の世界都市論のにも通じるところがあり、クリエイティブクラスの集積によって発展した都市は地価や家賃の高騰、格差の増大などのクリエイティブクラス以外の労働者にとって悪い影響を引き起こす可能性がある。都市の発展という側面のみからみればクリエイティブクラスの集積は良い影響が期待されるが、多様な人々が住む都市の街づくりという側面からみれば、クリエイティブクラス以外の労働者も共に住みやすい環境づくりを別途考慮する必要があるとえいるだろう。 

 また、リチャード・フロリダは経済学者としてクリエイティブ・クラスの集積の重要性を彼の分析を通して示した上で、その集積のために都市環環境の重要性を説いているのに対し、チャールズ・ランドリーは、都市政策者的視点から都市に住む人々全体のため人々の創造性に着目し、その創造性を人々が発揮するために都市の文化的環境を重視するようになったといえるだろう。 

 二人の都市の理論を都市の政策に取り入れ都市の芸術的活動や文化活動の推進を行う際、そのメリットとしては芸術文化活動が都市の住みやすさやなどの環境面で良い影響をあたえるという点と、芸術、文化活動などの創造的な産業が産業構造の変化によって、その都市の経済的な発展に良い影響を与えるという点である。芸術文化の促進が都市環境に良い影響を与えるという点は、従来の都市などの文化行政などにも通じる考え方であるが、彼ら二人の理論の新しさは、都市環境の向上によって優れた人材の集積が起こりうるということや、芸術、文化的環境のある都市では創造的に市民によって都市の課題の解決ができるとしている点であるだろう。この点こそが現代の創造都市論の重要な点であり、都市政策においては従来の文化政策の延長、また単なる文化政策の重点的な取り組みに終わらないような仕組みづくりが、創造都市という概念を都市政策に取り入れ都市の持続的発展を目指す上で重要であるといえるだろう。それには市民をうまく巻きこみ、協力を促すということが必要といえる。そのことによってジェイコブズがいうようなイノベーションインプロビゼーションを起こすということが目標となるべきである。

 

 

 

 

 

 

第2章

日本の代表的創造都市

 

日本でもいくつかの都市が創造都市へむけ取り組みを行っている。その中でも日本の創造都市への取り組みとして代表的な都市は、金沢と横浜である。金沢では2001年に経済界や市民が「金沢創造都市会議」を設立し、横浜でも2004年に「クリエイティブシティ・ヨコハマ」プランが提案され創造都市への取り組みが本格化している。

 しかし、同じ創造都市へ向けた取り組みといっても二つの都市では若干、創造都市という概念の背景が異なっている。それは、金沢では、チャールズ・ランドリーとその影響を受けた佐々木雅幸のう創造都市の理論に影響を受け取り組みを行っているのに対して、横浜ではどちらかといえばリチャード・フロリダの理論の影響を受けて取り組みを行っているという違いである。そこで、日本の中で最も創造都市にむけた取り組みを本格的に行っているこの二つの都市を分析し、その違いなどを通じ他の都市での取りくみにどう活かせるのかについて分析したい。

 

 

注1 DID:人口集中地区 人口密度が4000人/k㎡以上の基本単位区が互いに隣接して人口が5000人以上となる地区に設定される

注2 創造的産業:放送業、ソフトウェア業、映像、音声、文字、情報制作作業、建築設計業、デザイン業、著述・芸術家業、写真業、学術・開発研             

究  機関、興行業、広告業の合計

注3 全国平均値:163万2084人/5206万7396人

注4 全国平均値を100とした場合の指数

注5 創造的人材:科学者、技術者、文芸家、記者、編集者、美術家、写真家、デザイナー、音楽家舞台芸術家の合計

注6 全国平均値:303万9100人/6151万2500人

 

第1節

横浜市

 

 

基礎データ

 

総人口:358万人(DID注1 人口348.8万人、DID人口比率97.4%)

総面積:437.4k㎡(DID面積347.5k㎡、DID面積比率79.5%)

創造都市と関連する計画・ビジョン

文化芸術創造都市ークリエイティブシティ・ヨコハマ(2004年~)

概要

芸術文化を柱とする都市構想戦略

具体的な取り組み

・ナショナルアートパーク構想:横浜の都心臨海部を市民に親しまれる場とするとともに、開港都市としての歴史や文化等の資源を生かしながら、文化芸術活動の誘導と新しい産業の育成や観光資源の発掘を通じまちの魅力を高め、都市の活性化、横浜経済の発展を図る構想

・創造界隈の形成:アーティスト・クリエーターが創作・発表・滞在(居住)することでまちの活性化を図る創造界隈の形成を民間との協働で進める。

・映像文化都市:東京芸大の映像研究科を誘致、創造的産業クラスタによる経済活性化

横浜トリエンナーレ:3年に一回行われる現代アートの国際的な博覧会

・創造の担い手育成:クリエイティブシティ・ヨコハマへの実現へ向けて、新進のアーティストの育成をはじめ、創造的活動を担う人材の育成、アートNPO等中間支援組織の強化を図る。

・横浜都心部歴史建築物文化芸術活用実験事業:使われなくなった歴史的建築物を文化・芸術の活動の拠点として活用するプロジェクトで管理運営をNPO「bank art 1929」に委託

※表中の指標、内容は「創造都市への展望」(佐々木雅幸+総合研究開発機構)より一部引用

 

 

 

創造都市政策が誕生した背景

 横浜市は戦後、米軍による接収が長引いたことから都市基盤の整備が遅れており、その影響により横浜市は旧市街地の関内地区と横浜駅周辺の2つに分断されていた。そのため、二つの地区をつなぎ新たな都市を形成するプロジェクト「みなとみらい21」を企画し開発を行った。当初は順調に開発が進められていたが、バブル経済の崩壊によって、みなとみらい21の開発は停滞し、関内地区のオフィスの空洞化など横浜都心部の求心力の低下が起こっていた。その時、2002年中田市長就任し、中田市長は文化都市政策による都市再生戦略を重視し、同年「文化芸術と都心部活性化検討委員会」を設置、そこで新たな都市文化政策を検討したことによって都市の文化芸術を重視した取り組みが始まっている。現在は中田市長と変わり林市長となったが現在でも方向性を変えず都市の文化を重視した創造都市への取り組みは行われている。

 

創造都市政策の目標

横浜市は、2004 年1月「文化芸術創造都市―クリエイティブシティ・ヨコハマの形

成に向けた提言」を受け、

1 アーティスト・クリエーターが住みたくなる創造環境の実現

2 創造的産業クラスターの形成による経済活性化

3 魅力ある地域資源の活用

4 市民が主導する文化芸術創造都市づくり

という4つの目標を設定していた。そこから2010年より新しい4つの目標を掲げ、現在もその4つの目標を目指し、政策を進めている。その内容は

1 SPACE(空間):歴史と水辺の環境を生かした都市空間の形成

2 PEOPLE(ひと):クリエイティブな人々が集まるチャンスあるまちをめざす

3 RELATION(交流)ヨコハマの多面的な魅力を世界へ発信し、交流を活性化する

4 COMMUNITY(まち)より多くの市民が創造性を発揮できるまちの仕組みをつくる

というものである。

 

取り組みの概要

 先述の4つの新たな目標のために表中のプロジェクトの他、様々なプロジェクトが進められている。特に横浜市はその内容としてエリアごとに重点地域つくるなど、エリア戦略を策定している。その内容は、まず創造界隈の形成に関しては、関内・関外創造デルタを重点取り組み地域とし特にその地域内の以前から重点的に取り組みを続けていた地域を創造界隈モデル地区とし、その地域のさらなる拡充を目指している。また今後、取り組みをより進めていく地域を創造界隈誘導地区とし創造界隈の形成促進の取り組みを行っている。また、創造界隈の形成の他、ウォーターフロントエリアと名づけられた地域内の6つの地域を拠点地区としそれそれの地域で産業の集積、音楽、舞台芸術などの拠点を作っている。

 このような創造界隈の形成や、2004年の目標にあるような・アーティスト、クリエーターが住みたくなるような創造環境の実現や・創造的産業クラスターの形成による経済活性化という目標はリチャード・フロリダのクリエイティブな職業の人間の集積が都市の発展に大きく貢献するという理論に基づいてできたものといえるだろう。横浜市元職員の野田邦弘も著書「「創造都市」の中で創造界隈の形成はリチャード・フロリダの理論を参考にしたと述べている。2010年に作成した新たな目標についても、SPACEやPEOPLEに関して言えば、歴史的な建造物や文化的な環境を生かし、発展させ、クリエイティブな人材(特にリチャード・フロリダのいうクリエイティブ人材)の集積や能力の発揮を目指すというような観点が受け取れる。

 また、行政の組織においてもクリエイティブシティ・ヨコハマの推進のため改変が行われ創造都市推進部が作られ、その政策の推進を行っている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・オレンジ:関内・関外創造デルタ

・青:創造界隈モデル地区

・緑:創造界隈誘導地区

・赤:地域がウォーターフロントエリアの6つの拠点地域

 

 

 

 

効果

具体的な効果として、横浜市は平成2004年2月から2007年3月までの馬車道日本大通創造界隈の形成における市内の経済波及効果は約120億円と発表している。具体的には施設整備によって約39億円、入居企業、団体の事業活動・創作活動によって約65億円、イベント来場者の消費活動によって16億円となっている。また、関内地区のオフィス賃料も創造界隈の形成促進以後に2006年で底を打ち、上昇に転じた。

 

 

第2節

金沢市

 

 

基礎データ

総人口:46.24万人 

総面積:467.8k㎡

創造性指数

 

創造都市と関連する計画・ビジョン

金沢創造都市推進委員会(2008年~)金沢創造都市会議(2001年~2011年 計6回)

・金沢創造都市推進プログラム・CRAFTISM憲章

 

概要

craftsism(ものづくり精神)を重視した都市戦略

具体的な取り組み

金沢市民芸術村:近代産業遺産である工場を再利用した演劇や音楽の練習をする施設。

・金沢世界工芸トリエンナーレ:海外や日本のその他の地域から工芸に関するキュレーターを招き金沢のもつ伝統工芸やまちづくりに生かそうとする試み。

金沢21世紀美術館:県庁舎郊外移転に伴い空洞化が起こった都心部コンテンポラリーアートを中心とする世界の芸術作品を展示する施設の整備。

金沢市立美術工芸大学の設置:美術科、デザイン科、工芸

科の 3学科、大学院、造形芸術総合研究所を設けている.

・歴史的まち並みの保存:都市景観条例の制定

 

 

背景

 金沢市はその歴史的背景から伝統工芸が数多く残っており、また歴史的景観の保存にも積極的な活動があった。特に金沢の経済同友会は歴史景観の保存や伝統文化の保存に熱心であり、創造都市という概念が積極的に用いられる以前より伝統文化や歴史的景観の保存が進められていた。そんな環境の中で、経済同友会によって2001年に「金沢創造都市会議」が設立され創造都市という概念をとりこんだまちづくりの指標が出された。

 

創造都市政策の目標

 経済団体、工芸団体、市民団体及び行政からなる金沢創造都市推進委員会がCRAFTISM憲章を元にして2013年に金沢創造都市推進プログラムを策定している。

 CRAFTISM憲章は

・文化と産業の連環を生みだす“Craftism”を、さらに磨き、高めていく。

・人を育み、生活を豊かにする“Craftism”を、次世代に継承していく。

・「手仕事のまち・金沢」の源泉たる“Craftism”を、国内外へ発信していく。

というものである。

 また、プログラムの中で金沢が目指す将来像として

1.文化とビジネスをつなぐまち

2.創造の担い手を育てるまち

3.世界を引きつけるまち

という3つを挙げている。

 金沢市は元からもつ伝統工芸や歴史的景観を生かし、それらをさらに発展させるべく創造都市という概念を用い更なる都市の内発的発展を目指しているといえるだろう。

 

取り組みの概要

 金沢市は創造都市推進プログラムにも見られるとおり、金沢のもともともっているものづくり精神を重視した街づくりを進めている。金沢が目指す将来像をもとにそれぞれ取り組みが行われている。

 特に金沢世界工芸トリエンナーレは、職人的なものづくり精神をまちづくりにも生かそうとする海外、国内の都市の政策担当者と職人を招いておこなっていた世界工芸都市会議と生活に即した創意ある工芸品の展示を行っていた世界工芸コンペティション・金沢の双方の主旨を継承しながら統合し発展させたものとなっている。国内外からキュレーターを呼び、イベントやワークショップ、作品展示を行っている。国内外のものづくり精神をもつ都市のアイディアを積極的に吸収しようとよう意図が見られる。

 

 

 

第3章

仙台市に創造都市戦略を生かす

 

 仙台市では復興のため経済発展の促進のプランのなかで、創業の促進やクリエイティブクラスの集積ということを目標としている。また、すでに今まで述べてきたような創造都市論の都市政策をある程度取り込んでいる。復興や今後の持続的経済発展のために、より本格的な創造都市論の戦略を取り込むことで生かされるのではないだろうか。仙台市の現状や、すでに現在ある程度行われている創造都市戦略に関わる内容について分析し、創造都市戦略がどのように今の仙台市に生かされるかや、より生かすための方法を提案したい。

 

第1節

仙台市の現状

 

 まず、仙台市が現在どういった状況にあるのかについて分析する。

 統計から見た仙台

人口

人口  推計107万1383(平成26年)

世帯数 推計4万9141(平成26年)

人口はここ数年一貫して増加している。また大学や専門学校が多いため人口分布において若年の人口が全国と比べて非常に多くなっている。若年人口の割合は他の政令指定都市と比較しても割合が高く、学都仙台といわれるように若者が非常に多い街となっている。

 

 

 

・社会増加数

 

      転入数、転出数、社会増加数の推移-全市(平成 16 年~平成 25 年)

 
   


                                                      ※統計情報せんだいより引用

転入数と転出数の推移は表の通りである。平成21年までは転出超過傾向であったのが平成22年を境にして転入超過の年が続いている。平成22年は転出超過の数が少ないが、おそらく平成23年にあった東日本大震災の影響により大きく転入超過の数が増えていると思われる。

 

・産業構造

就業者の割合から見る仙台市の産業構造

 

表1              産業3部門別有業者数及び構成比                 (単位:千人,%)

 
   

 

                                                                       ※統計情報せんだいより引用

 

 

 

 

 

  表2       総生産(名目)の経済活動別構成比比較-仙台市宮城県,全国(平成23年度)

 
   

 

                                                    ※統計情報せんだいより引用

 

 

表1の数字より第三次産業の就業者の割合が全国と比べて高いということが特徴として挙げられる。また平成19年と比べて就業者数の減少は見られず、第二次産業で5.5パーセントの増加、第三次産業で2.3パーセントの増加がみられる。また有業者を産業別にみると,「卸売・小売業」が 10 万 4 千人(有業者に占める割合 19.5%)で最も多く、次に「医療,福祉」が 5 万 7 千人(同 10.7%),「建設業」が 5 万 6 千人(同 10.5%),「サービス業(他に分類されないもの)」が 4 万 2 千人(同 7.9%)となっている。

 総生産でみても第三次産業の割合が非常に多くなっている。特に卸売り、小売業、サービス業の割合が全国と比べて高くなっている。

 

 

 

・支店経済都市・仙台

仙台市は支店経済都市というふにいわれることがあるが、仙台市の事業所における支店の割合は2006年のデータで37.4%とすべての政令指定都市のなかでもっとも高い割合になっている。2位の千葉市でもその割合は33.2パーセントであり、その数値の高さがわかる。

 

 

 

仙台市の経済状況

             

               

 

 

 仙台市は人口の面から見れば年々成長している。また、東北地域では最大の都市である。その要因としては高等裁判所、財務局、通産局などといった、東北ブロックの中枢管理機能の集積や、大学や専門学校が数多くあるということによって人口の集中がおこったといえる。それにより卸売り・小売業やサービス業などの第3次産業の企業が支店の立地を増やし、またそれによっても人口の増加が起こっているといえるだろう。また事業所の企業の支店の割合が高いということや、大学、専門学校の集積により若年者の人口の割合が多いということは人材の流動性が高く、長く仙台市に住む人間が比較的少ないということが言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第2節

仙台市の創造都市論に関わる内容

 

創造都市と関連する計画・ビジョン

創造と交流仙台都市ビジョン2007(芸術と文化の創造性を生かした新しい都市の個性と活力の創出)

仙台経済ステップアッププラン(クリエイティブ連携促進プログラム、ミュージアム観光推進プログラム)

100万人の復興プロジェクト(創造都市の推進)

具体的な取り組み

仙台国際音楽コンクール仙台フィルハーモニー管絃楽団との協働事業、10-BOX国際演劇学校

・芸術、文化イベント:仙台ストリートジャズフェスティバル 仙台クラシックフェスティバル とっておきの音楽祭

・市民の文化ボランティアの育成、文化活動・情報発信の支援

・仙台メディアテークなどアート分野一元化

・仙台クリエイティブクラスターコンソーシアム

・trunk

支える仕組み

仙台市民文化事業団

・シティセールスサポーターの会

・学都仙台コンソーシアム

 

 

背景

 仙台市ではもともと市民の音楽活動や演劇(劇団約60)など芸術・文化活動が盛んである。イベントでは仙台演劇祭やストリートジャズフェスティバル、仙台クラシックフェスティバルなどが行われている。また、施設の面でもメディアテークやせんだい演劇工房10-BOXや音楽工房MOXなどの施設が整備されている。仙台市はもともとの土壌として創造都市という概念を用いて街づくりをすすめるうえでとても良い環境があるといえるだろう。

 

取り組み概要

仙台市ではクリエイティブクラスの集積にむけていくつかの取り組みが行われている。その取り組みは以下の通りである。

・仙台クリエイティブクラスターコンソーシアム

クリエイターやクリエイティブ起業のサポートを行い、仙台にクリエイティブ産業のクラスターを形成すること、都市、社会の課題をクリエイティブ・アプローチにより解決することを目的として活動している産学官の連携組織。

クリエイティブ活動に関するプロジェクトの育成、クリエイター、クリエイティブ起業および他産業、教育機関のネットワーク形成、クリエイティブ活動の情報発信を主に行っている。

 

卸町(TRUNK、MOX、10-BOX)

卸売りに業に特化していた卸町では現在、クリエイティブ関連業種の集積が進みつつあり、クリエイティブ関連企業が使用できるシェアオフィスのTRUNK や演劇施設の演劇工房10-BOX、音楽練習用施設のMOX、イベント施設のはとのいえなど多くのクリエイティブ関連施設の集積がおこっている。現在「人に愛され、人が集まり、人が住めるまち」をテーマに2015年の地下鉄東西線の開通を視野にいれまちづくりを進めている。またこうした動きをみて仙台市はクリエイティブ産業立地促進助成制度をつくり助成をおこないクリエイティブ産業の集積の後押しをしている。

 

仙台経済ステップアッププラン2013

仙台市は震災復興後の仙台市経済の発展のために仙台経済ステップアッププランをつくり事業を進めている。そのなかでクリエイティブ促進育成プログラムとし129,079 千円 の事業費でクリエイティブクラスター連携促進プログラムや伝統産業高付加価値化支援事業、情報産業支援事業などを行っている。

また、ステップアッププランはミュージアム観光推進プログラムなど創造都市論の概念に近いプログラムがある。

 

第3節

今後の仙台市の持続的発展をめざして

 

仙台市では主にリチャードフロリダの理論の影響を受けクリエイティブクラスの集積を目指した活動がいくつか行われているように思われる。また、音楽、芸術に関わるイベントや団体、施設も数多く存在している。しかし、それらのイベントや施設、団体などを包括的に指導する組織や計画はないように思われる。それらを包括的に運営し、促進を行えばそれが有機的に影響をあたえ仙台市の発展により大きな影響をあたえるだろう。それらを包括的に取り組む概念がまさにこれまで述べてきたような創造的都市論であり、仙台市は創造的都市論という概念をもちいることで都市の環境の魅力の向上による人材の集積、またそれによる都市の課題の創造的な解決がなされるのではないだろうか。震災からの復興という大きな課題を抱えている今、都市の創造性がもっとも必要とされているはずだ。

 

 

参考文献、HP

 

創造都市への展望 「佐々木雅幸+総合研究開発機構」学芸出版社

創造都市の経済学「佐々木雅幸」勁草書房

創造都市への挑戦「佐々木雅幸」

都市の原理「ジェイン・ジェイコブズ

クリエイティブ都市論「リチャード・フロリダ」

文化政策学「後藤和子[編]」有斐閣コンパクト

発展するまち、衰退するまち「佐貫利雄」だいわ文庫

創造都市・横浜の戦略「野田邦弘」学芸出版社

横浜市役所HP http://www.city.yokohama.lg.jp/

仙台市役所HP http://www.city.sendai.jp/

金沢経済同友会HP http://www.kanazawa-round.jp/

金沢世界工芸トリエンナーレHP http://www.kogei.bp-musashi.jp/

金沢市HP http://www4.city.kanazawa.lg.jp/index.html

wikipedia

仙台市 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%99%E5%8F%B0%E5%B8%82

仙台クリエイティブクラスターコンソーシアムHP http://www.sendai-c3.jp/

演劇工房10-box HP http://www.gekito.jp/index.html

音楽工房MOX HP http://www.mox-sendai.com/index.html